2011年10月20日木曜日

知識科学シンポジウムのお知らせ

たいぶ遅くなりましたが,10月1日に開催されたJAISTフェスティバルで行ったデモには
たくさんの方々にご来場していただきました.この場を借りてお礼申し上げます.


さて,11月13日(日)に毎年恒例の「知識科学シンポジウム」が東京で開催されます.
場所は千代田区一ツ橋にある学術総合センターで,時間は9:55-16:35を予定しています.

「ナレッジマネジメントの多面的展開」というテーマで本学の教員をはじめとして,
一線で活躍されている研究者,宇宙開発に携わっている方などの講演があります.

他にも本学で研究に励んでいる学生さんたちのポスター発表も用意されています.
入学志望の方々はぜひお越しになって,本学でどのような研究が行われているか
一度ご覧になってみることをおすすめします.本研究室からは2名発表予定です.

参加申し込みとプログラムの詳細はこちらより.http://www.jaist.ac.jp/KSS14/


2011年9月26日月曜日

JAISTフェスティバルのお知らせ

来たる10月1日に北陸先端科学技術大学院大学にてJAISTフェスティバルが開催されます.
これまで主に入学希望者向けに 実施されていたJAISTオープンキャンパスから,
能美市や能美市商工会との共催で地域住民の皆さまが楽しめるプログラムに変わりました.
当日は研究紹介だけではなく,地元中学校の吹奏楽や小松うどんなどの出店もあります.
プログラムの詳細はこちらよりアクセス.http://www.jaist.ac.jp/festival2011/index.html

私が所属している研究室では,研究のデモンストレーションとして3つの展示を用意しています.
ひとつはロボットとの視覚的インタラクション,もうひとつは左右が反転するメガネの体験,
そして3つ目は私が担当する「マネーココロジー~あなたの価値観教えます~」です.
これだけでは何のことだかよくわからないと思いますので,下に宣伝の画像を載せておきます.

   

他には研究室メンバが企画に携わっている高校生・高専生を対象とした科学教室もあります.
「体験!未来のモノづくり」と題して普段触れることの少ない3Dプリンターやレーザーカッター
などの自動工作機械を使って自分オリジナルの立体物の作成に挑戦できるそうです.
まだ参加者を募集しているそうなので,興味のありそうな高校生がいらっしゃいましたら
右のページから申し込みしてください.http://www.jaist.ac.jp/festival2011/kagaku.html

2011年9月20日火曜日

地域通貨「げんき」と「未杜」

9/10-11に地域通貨が持続的に流通している事例を調査すべく,
大阪府寝屋川市の「げんき」と兵庫県丹波市の「未杜(みと)」を
運営されている方々や会員の皆さまからお話しを聞かせていただきました.

「げんき」はNPO法人地域通貨ねやがわが発行している紙券型の地域通貨で,
寝屋川市内でのボランティア等を通じて手に入れることができます.
手に入れた「げんき」は寝屋川市内の19の商店街で買い物する際に使えたり,
別のボランティアをお願いする際の謝礼として使えます.



ここは「げんき」が一番多く使われている大利(おおとし)商店街です.
全81店舗,生活するためのほとんどのものをここで購入することができます.
「げんき」は前身の「ありがとう券」の頃より10年も続いている地域通貨です.

私は,長年ボランティアの対価として地域通貨が支払われれば,
もはやそこには親しい人間関係が形成されて,地域通貨を介さなくても
ボランティアが成立するのではないかと考えたのですが,
実態は逆のようで,地域通貨よりも現金を求めるケースが増えているそうです.
やはり需要があるボランティアは高齢者のサポートで,
特に介護保険適用外のサービスが求められているようです.
ですが,高齢者サポートは,ボランティアの中でも担い手が少なく,
内容もしんどいと感じる方が多いそうです.

地域通貨よりも現金が欲しいという現状では,
受け取る方も支払う方も「げんき」がどうして始まったのか?
その理念を思い返さなければ「げんき」を通じたボランティアも
通常の現金によるサービスに変わってしまうのかもしれません.

しかしながら,「げんき」の発行金額は年々増加傾向にあり,
平成22年度には600万円を超えています.
ボランティア以外の個人購入がほとんどない現状を考えると,
「げんき」によるボランティア活動は下火にはなっていないことがわかります.

また,大利商店街では「げんき」の利用促進に積極的ですので,
ボランティアという非商業活動と商店街での購買活動という商業活動が結びつくことで
地域を盛り上げるという「げんき」による街づくりはこれから本格化しそうな感じです.

一方で丹波市の「未杜」は,120名程度の会員の中だけで流通する通帳型の地域通貨です.
こちらはNPO法人丹波まちづくりプロジェクト事務局が運営を行っており,
「人権・環境・共生」がコミュニティのテーマです.
基本的に「未杜」のやり取りは会員のみで行われるので,
互いに顔の見える相互扶助や仲間作りが実現されていると感じました.

コミュニティ内で発行されている未杜新聞の始めには先ほど挙げた
3つのテーマ(人権・環境・共生)に沿ってこんな言葉が書かれています.

あなたの参画が多様性を認め合うコミュニティづくりの輪へ
あなたの余剰を分かち合う優しさが丹波の自然をまもる輪へ
あなたのすてきな能力の提供がコミュニティの自立と共生へ


今回10名ほどの会員の方々にお会いしましたが,
実に多種多様な方々ばかりで驚かされました.
主婦だけではなく海外勤務されていた元商社マンや造園業の方,
役所のOBや病気を克服された方...etc.
普通ならば価値観がぶつかりあって統制がとれないのでは?
と心配になるところですが,これが多様性を認め合う未杜の特徴なのでしょう.
さらに未杜では会員ぞれぞれの能力を生かすべく,
月に1回井戸端会議と称して会員が講師となり,自由な論題で講演を開くのです.
どんな人でも自分の得意分野で社会に貢献できるんだ!
そのことを未杜は実践をもってコミュニティに生かしています.
(井戸端会議は2001年から現在まで続いているそうです)



会員の皆さんとの会合の中で,こんな質問を受けました.

「ある方がいつも大幅なマイナスになっていてそのことを気にされている.
皆さんなら何と声をかけてあげますか?」

私は同じゼロサムゲームである先物市場を引き合いに出して
次のような趣旨の回答をしました.「先物市場は自分の持っている
お金を増やそうとする利己的な人たちが参加するコミュニティなので,
プラスになった人だけが生き残り,マイナスになった者はコミュニティから離脱していきます.
しかしながら,皆さんは3つのテーマに沿ったコミュニティを作ろうとして参加しているので,
マイナスになる人がいても会員から非難する者はなく,
その人を含めてコミュニティが形成されているのです」と.

今回の調査も含めて地域通貨には目的や用途にあわせて
様々なタイプものが存在していることを再認識させられました.
いずれの地域通貨も持続的に流通している一番の要因は
運営者の努力や工夫であることは間違いありません.

現在行っている地域通貨の流通メカニズムの研究も運営者の
少しの支えにでもなるような成果を出せるよう取り組んでいきたいと思います.

2011年7月27日水曜日

地域通貨流通実験のDP刊行

北海道大学の西部先生と栗田さんと共同で行っている貨幣意識の論文が
ディスカッションペーパーとして刊行されました.書誌情報は以下の通りです.

小林 重人,栗田 健一,西部 忠,橋本 敬(2011)『地域通貨流通実験にみるミクロ・メゾ・マクロ・ループの流れ-メゾレベルの貨幣意識を中心にして-』,「北海道大学大学院経済学研究科 Discussion Paper Series B」,No. 2011-96.

この論文は今年3月に開催された進化経済学会での発表内容に対して,
研究会や学会での議論を踏まえて修正を加えたものとなっています.

我々は,貨幣制度が制度生態系を形成していることに着目し,
複数の貨幣が共存している現実は,経済合理性という観点だけで十分説明できず,
貨幣は人々が抱く価値規範を反映した制度でもあるという仮説を提示してきました.
提示した仮説を検証するために,これまで人々の貨幣意識をアンケートによって調査し,
4カ国のべ300人以上から回答を得てきました.

主な成果として社会活動の違いによる貨幣意識の差異,
地域通貨の流通実験前後による貨幣意識の差異を明らかにすることで,
貨幣意識の差異から制度形成および変化のメカニズムを探ってきました.
しかしながら,ミクロ・メゾ・マクロ・ループにおいて貨幣意識の変化がどのように起こり,
ループ内の関係に影響を及ぼしているのかについては説明できていませんでした.
本稿では,仮説として示したミクロ・メゾ・マクロ・ループがどのように機能し,
貨幣意識と相互作用を行っているかについて検討,説明するものとなっています.

分析内容と結果につきましては,論文をご参照ください.
論文は北海道大学のリポジトリであるHUSCAPよりダウンロードすることができます.

2011年6月28日火曜日

長岡市川口地区インタビュー調査

上越教育大学の吉田先生と共同で進めている新潟県長岡市川口地区における
地域通貨導入の研究のため,現地でインタビュー調査を行ってきました.

川口地区までは車で片道4時間かかります.前回は日帰りをしてヘトヘトになったので,
今回は木沢集落にある「朝霧の宿 やまぼうし」に宿泊することにしました.
ここは2004年に廃校となった木沢小学校の建物を利用して地元の人たちが
運営している手作りの宿です.お風呂やアメニティグッズはありませんが,
地元ならではの山菜料理がふんだんに振る舞われました.



もちろん体育館も現存しています.思わず懐かしい綱登りもやってしまいました.



壁は一面に集落での活動の様子がポスターとして張り出されていました.
木沢の人たちがこの集落の良さに自信と誇りを持っていることが伝わってきました.



自然も食事も良いですが,「やまぼうし」には人の心の温かさがありました.
レクリエーションや焼き物,そば打ちも体験できるそうなので,ぜひ利用してみてください.



一泊二食(大人ひとり)5,900円より
昼食のみ(5名以上・ひとり)1,000円より
住所:長岡市川口木沢467番地
電話:0258-89-2455

翌日の昼食は,「やまぼうし」と目と鼻の先にある「木沢里山食堂」でいただきました.



木沢産そば粉100%使用の自慢のそば.これで800円とは安すぎです.
四角いそばではなく,丸そばというのも珍しいです.毎週金・土・日のみ営業しています.



インタビュー調査のほうは,地域通貨の流通に深く関与するであろう人たちから
導入に関して前向きなコメントや具体的な流通のイメージを聞き出すことができました.
うまく進んでいけば1年や2年で終わるような仕事にはならないと感じましたので,
川口の活性化に寄与するようにじっくりと微力ながらお役に立ちたいと思っています.

2011年6月8日水曜日

申請書検討会

学生から事前に提出された学振研究員の申請書に対して複数の教員が
コメントおよびアドバイスを行う申請書検討会を開催しました.

このイベントは昨年度から始めたもので,開催の経緯は,申請書の書き方を教えても
学生が実際に上手く書けているかどうか見えてこなかったというのが理由です.
今年度の参加者は5名,昨年度が2名でしたので前年比2.5倍増となりました.



アドバイザーとして5名の教員に協力をお願いし,学生ひとりに対して専門領域が
近そうな教員とそうではない教員にアドバイザーとしてついていただきました.
これはタコツボ化を避けるためと,専門外の人にでもわかる申請書を書いてもらうためです.

アドバイザーは自分の経験に基づいてさまざまな指摘を行います.
基本的に学生の申請書がより良いものになるようにアドバイスを行っていますが,
これらは必ずしも他のアドバイザーからの指摘と一貫性のあるものではありません.
学生はこの点を理解した上で取捨選択し,自分の申請書を直さなくてはならないのです.
逆に混乱を招いているかもしれませんが,実はこれも知識科学的な営みなのかもしれません.

今回の説明会と検討会の参加者から学振研究員が生まれることを切に願っております.
また,本活動に対するご意見やご感想がありましたら,ぜひコメントに書き込んでください.
学内限定の学振情報サイトへの投稿もお待ちしております.よろしくお願いいたします.

2011年5月31日火曜日

人工市場実験の論文出版

私と橋本さんの共著論文が5月にEvolutionary and Institutional Economics Review (EIER)より出版されました.書誌情報は以下の通りです.

Shigeto Kobayashi and Takashi Hashimoto (2011) "Benefits and Limits of Circuit Breaker -Institutional Design Using Artificial Futures Market-", Evolutionary and Institutional Economics Review (EIER), Vol.7, No.2, pp.355-372.

投稿したのが2年前の10月でしたから,約1年半かかっての出版と相成りました.
この辺りの経緯につきましては,以前ブログの記事にも書かせていただきました.

論文の内容は,株式市場の取引停止措置である「サーキットブレーカーの発動期間」と
「発動後の市場の振る舞い」がどのような関係であるか人工市場実験によって考察しています.

価格情報に基づいて意思決定を行う取引エージェントに関する研究では,
サーキットブレーカーが価格変動の抑制・市場決済システムの安定化に寄与する一方で,
約定数量を減少させること,そして,サーキットブレーカーの発動期間の長さが
サーキットブレーカーの制度設計の重要パラメータであることを示しています.



上図の縦軸は価格変動率,横軸はサーキットブレーカーによる取引停止期間です.
市場に流動性を与えるランダムエージェント(Ar)の割合が少ない場合,
取引停止期間が長くなるに従って価格変動が大きく抑えられています.
しかし,Arの割合が大きいとサーキットブレーカーよる価格変動の抑制効果は減少します.

また,サーキットブレーカーによって極端な富の偏在が抑制されることを見出し,
サーキットブレーカーが市場システムの大規模な崩壊を抑える役割があることを見出しました.



上図の縦軸はジニ係数、横軸はサーキットブレーカーによる取引停止期間です.
市場に流動性を与えるランダムエージェント(Ar)の割合に関わらず,
取引停止期間が長くなるに従って利益の偏在が大きく抑えられているのがわかります.

大まかな説明となりましたが,詳しくは論文のほうをご参照ください.
論文はJ-STAGEのこちらのページよりダウンロードすることができます.