2010年11月3日水曜日

Social Choice Solutions

Dr. Andrey Subochev(State University-Higher School of Economics)の
セミナーに参加してきました.講演タイトルは,"Social choice solutions
based on majority relation: stable solutions and a new method of ranking"

私の不勉強もありますが,社会選択理論はほとんど触ったことのない分野.
学部生のころにケネス・アローの本を読んだり,アマルティア・センの本を
買ったりしたこともあったのですが,いかんせん扱う数学が私にとっては高度すぎて...

やはりでしたが,のっけから数式スライドのオンパレード.
研究背景やモチベーションもすっとばしです.
聴講者である多くの学生はそのスライドを必死になって写し取っています.
それでもコンドルセのパラドックスからアローの流れにかけて
ごくごく簡単に話をしてくれたので,少しはフォローできましたけど.

個人の選好の集合体としての社会選好をどのように集計し,社会選択をいかにしていくか.
これは私の考える制度設計とも大いに関わるものであり,興味深い分野でもあります.
ただし,個人の完全合理性を前提にして進められると抵抗感が出てしまうのもまた事実.
最近はミクロ・メゾ・マクロの三者ループにおける世論や民意の形成過程について
考えたりしているのですが,やはりこういう動的な考え方をするとやっぱり
マルチエージェントシミュレーションしかないのかなと(とりとめもない感じですが).



帰り道,ガリバルディ通りのイルミネーションが点灯されていました.
2週間くらい前から準備はされていたので,いつ点くのだろうと楽しみにしていました.
鳥というのはわかるのですが,いったい何の鳥なのでしょう?あまりかわいくないですね(笑).
トラムから見えたピエトロミッカ通りはもっとキレイで,星座のイルミネーションでした.
今度買い物がてらカメラを持って撮影してきたいと思います.



他にも歩きながらジャズを演奏する楽団にも出くわしたりして,点灯式でもあったのでしょうか?
ちょっと早いかもしれませんが,トリノの街はクリスマスモード突入です.
(楽団の写真を撮ってみたのですが,ブレブレになってしまいすみません).

2010年11月2日火曜日

Neural Networks School 1日目

Artificial Neural Networksの基礎な理解とそれらのプログラミング構築を学ぶ
勉強会に参加しています.勉強会は2日間に分割され,それぞれ1日がかりで行われます.

数年前に情報科学研究科の講義に紛れて勉強したことがあったのですが,
いかんせん自分の研究で使うことがないので,記憶があいまい.
でも,橋本研メンバの研究でも使われているし,もともと興味もあったので再勉強です.

ニューラルネットの話は一度聞いて勉強したことがあった内容でしたが,
プログラミングのほうは初めて聞く内容がたくさんありました.
Pythonと言語仕様が変わらないCythonと呼ばれる言語で進めていくのですが,
この言語によってCの拡張を書くことができるそうです.

もともとCを使ったことがなかった私にとってはどれだけありがたいものか
わからなかったのですが,コンパイルすると処理速度が相当上昇するとのこと.
Pythonの利便性をそのままに処理速度がC並みに上がるとはビックリです.

実際プロファイリングによってPythonとCythonの速度の違いも実感.
最適化処理やサンプルコードなど,その他にもいろいろとレクチャーを受けました.

PyBrainという機械学習ライブラリも紹介.ニューラルネットの基本的な
アルゴリズムはもちろんのこと,比較的最先端なものも取り揃っていること.
実際の利用は来週に持ち越しとなりましたが,初心者の私でも簡単に使えそうな感じです.

ここにいるとJAISTと変わらない感覚で過ごしてしまうのですが,
よくよく考えると経済学部なんですよね.日本の経済学部にもこういうところあるのかな?

2010年10月31日日曜日

サマータイム終了

サマータイム(夏時間)をご存じでしょうか?
日本にはあまり馴染みのない制度ですが,欧米ではとても一般的な制度です.
夏の日照時間が長い欧州で,労働時間や余暇,そしてエネルギー資源を
効率的に使おうと始まったものらしいです.

そのサマータイムが今日で終了したため,
イタリアと日本との時差が1時間延びて8時間になりました.

どのように時刻を調整するかというと,
10月の最終日曜日の午前3時になると,
午前2時に1時間時計を戻し,1時間増やすというわけです.
私の携帯電話は,自動的に冬時間になっていました.
残念ながら,腕時計は自分で1時間戻さなければなりませんでしたが.

この頃は午前8時になっても若干薄暗い感じだったので,
これでようやく日本の朝と同じ感覚に戻るでしょうか.

ちなみに明日11月1日は「諸聖人の日」でイタリアは祝日.
聖人と殉教者に敬意をはらう日らしいので,お祭り騒ぎというわけではなさそうです.
もう明日から11月ということで,トリノは完全に冬装備.
私もダウンを来て買い物に行っています.雪もそろそろ降るのかな?

2010年10月30日土曜日

プリペイドカード

モバイルキーの残高が10ユーロを切り,このままでは来月からネットを使えなくなるので,
リカリカ(チャージ)をするべく自宅近くのタバッキへ.

「ヴォレイ リカリカーレ ムニャムニャ」 
前にチャージしたときに唱えた呪文を復唱するも店主は怪訝そうな表情.
チャージできる金額もさることながら,どうやらお店でチャージできる機械が使えないそう.



代わりにこれでリカリカできるよと出してくれたのがこのカード.
チャージ用のプリペイドカードです.むむう,カードの使い方がわからない.
なので,このタバッキではトラムの回数券(カルネ)だけを大人買いして別のタバッキへ.

別のタバッキにて同じ呪文を復唱するも,これまた店主が怪訝そうな表情.
やっぱりお店でリカリカできる機械が使えないという.時間によって使えないのでしょうか.
イタリア語で一生懸命伝えようとしてくれたのですが,早すぎて私には理解できません.
お礼を言って去ろうとしたとき,こんなのあるよって出されたのがさっきのカード.
せっかくだから試してみるかと10ユーロ×2枚を購入して帰宅.



これ,カードの後ろのスクラッチの部分を削り,そこに書いてある16桁の番号を
電話で入力すればリカリカできるというものらしいです.

チャージ用の番号4242に電話すると,女性の自動音声が流れ,
イタリア語で○○をするなら0番,××をするなら1番,△△をするなら2番・・・
そこまではわかったのですが,肝心の○○や××がまったくわかりません.
ネットで調べるもTIM(イタリアで一番大きい携帯会社,日本でいうNTT DoCoMo)に
関する情報は載っているのですが,私のキャリアであるWind(新興の携帯会社,
日本でいうAUみたいなもの)に関する情報はまったく載っていないのです.

この4242がフリーダイヤルなのをいいことに,
そこから繰り返し何度も聞くという作業が始まりました.
いかんせん選択肢が多いので,聞き分けるのに相当苦労しましたが,
最初は1番,そして次も1番をプッシュすると,カードの裏に記載されている
16桁の番号をプッシュせよというところにいくことがわかりました.
ここまでたどり着くのに20分は擁したでしょうか.

そして16桁の番号を入力して終了し(確認のために番号を復唱してくれます),
ネットでモバイルキーの残高をチェックすると,ワーイ!!
ちゃんと10ユーロがチャージされてました.

電子辞書がないながらも頑張りました.そして,また大人の階段のぼりました(笑).

2010年10月25日月曜日

貨幣意識の論文出版

北海道大学の西部教授と栗田さん,そして橋本さんと共同で進めている
貨幣意識の研究に関して,このほどふたつ論文が刊行されました.

ひとつは,異なる社会活動に従事している集団の貨幣(お金)に関する
価値意識の違いを調べたもので,調査対象として,社会集団として対照的な存在と考えられる
地域通貨に関係している人たちと金融機関に従事している人たちを取り上げています.
そもそも「貨幣意識」とは何ぞやということですが,簡単にいえば現行の貨幣制度の下で
自己の行動を決定するための価値基準と考えてください(詳しくは論文をご参照ください).
その貨幣意識の違いと社会活動の違いの相関関係を調べたというのがメインの内容です.

2者間の貨幣意識の違いは割とはっきりと出て,地域通貨関係者は金融関係者に比べて
貨幣の多様性と公共性(平等,安全,友愛)を強く是認することがわかりました.
一般の人たちの貨幣意識も調査したのですが,金融関係者は貨幣の多様性と公共性について
一般の人たちよりもこれらの数値がさらに低い傾向にありました.

活動を行ったから意識が変わったのか,もともと同じ意識を持つ人たちが集まっただけなのか,
因果関係まではわかりませんが,異なる社会活動に属する人たちでは価値意識に違いがあり,
ここから,その価値意識に特徴付けられた多様な制度が生み出しうることが示唆されます.
さらなる結果の考察に関しては論文をご参照ください.以下,書誌情報です.

小林 重人*,西部 忠*,栗田 健一,橋本 敬:社会活動による貨幣意識の差異-地域通貨関係者と金融関係者の比較から-,企業研究,Vol.17, pp.73-91, 2010. (*equal contribution)

残念ながらこちらの論文はウェブでダウンロードできません.
出版元の中央大学企業研究所に問い合わせていただくか,
私に連絡いただければ別刷りをお渡しすることができます.
またこの論文は,2008年に北海道大学社会科学実験研究センター(CERSS) より
ワーキングペーパーとして刊行された内容を若干修正したものですので,
そちらでしたらウェブからダウンロードすることができる状態になっています.
ただし,ダウンロードにはご自身のメールアドレスの入力が必要です.


もうひとつは,地域通貨の流通が人々の貨幣意識にどのような影響を与えるのかを,
武蔵野市にて9ヶ月間実施された地域通貨「むチュー」の流通実験を通して調べた論文です.
結果から,単に地域通貨を流通させるだけでは人々の貨幣意識は変化せず,地域通貨に対する
理解が促進されると貨幣の多様性を是認する傾向になることがわかりました.
しかしながら,理解が促進されると,同時に利子に対する肯定的な評価を強めるという
地域通貨の特性(利子ゼロまたは減価)とは逆行する意識も現れることがわかりました.
すなわち,地域通貨の理念や特性を理解することは,それらに対する評価として,
肯定と否定の両方を生み出しうるということになります.
これは地域通貨の導入を検討する上で,とても興味深い結果です.

また,流通実験が2008年10月に発生したリーマンショックをまたいでいることから,
金融危機のような経済環境の大規模な変化が人々の価値意識を
どのように変容させたかということについても調べることができました.
こちらは,地域通貨の流通前後でベーシックインカムを肯定する意識と
拝金主義を否定する意識が強まっていることがわかりました.
とりわけこの2つは金融危機後に人々の批判にさらされた新自由主義を否定する項目であり,
金融危機が人々の貨幣意識に影響を与えた可能性が高いと言えます.以下,書誌情報です.

小林 重人*, 栗田 健一*,西部 忠,橋本 敬:地域通貨流通実験前後における貨幣意識の変化に関する考察-東京都武蔵野市のケース-,北海道大学社会科学実験研究センター(CERSS) ワーキングペーパーシリーズ,No.118, 2010. (*equal contribution)

こちらも同じく北海道大学社会科学実験研究センター(CERSS)より
ダウンロードすることができます.別刷りはございませんので,ウェブのみでご覧ください.

2010年10月22日金曜日

シミュレーションの講義

10月18日~22日にかけてドクター向けのシミュレーションの講義があるので
参加してみないかとお誘いを受けたので,ぜひぜひにと参加してきました.
いわゆる集中講義で,1日3コマ×5日の計15コマ.しかも講義は朝9時からお昼まであり,
午後はhomeworkのための時間に設定されています.

いつもはトラムに乗って20分くらいのキャンパスへ通っているのですが,
この講義は中心街にあるポー通りにある別にキャンパスで行われました.
(Porta di Poのすぐ近くで,自宅から歩いて20分のところです)

一度も行ったことがない場所だったので不安があったものの,
大学のキャンパスだから迷うことはないだろうと思っていたら,ものの見事にやられました.



まず看板が驚くほど小さくてまったく目立たない.扉も通りにある普通のもので,
まさかこんなところがキャンパスの入口だなんて思いもよりませんでした.
幸いにも通り過ぎた後に知り合いの院生さんと会ったのでわかりましたが,
そこで会っていなければ永遠に探し続けていたことでしょう.

しかもこの扉,インターフォンを押して中から開けてもらわないと開きません.
建物の中に入っても同じような扉がもうひとつあり,
そこでは秘密の番号を押すと開くという関門でした(謎).

経済学部は建物の4階の1フロアを貸し切っているようで,
ここはどうやら院生とポスドクの居室になっているようです.
院生さんはこんな街中で研究していたんですね.
小さな部屋に数名がはいっている居室は日本のそれとあまり変わりないものでした.

講義は英語で行われ,参加者は10名程度.例によって国籍もさまざまです.
エージェントベースシミュレーションにおけるモデリングについて
「NetLogo」「Python」を使って実践するという内容です.
NetLogoは3年前に参加したESSAでも大人気の言語で,
プログラミングに慣れていない社会科学系の人たちにとっては非常に扱いやすい言語です.
Pythonもいまや産業界の開発の場で広く使われている言語であり,
統計解析で用いられるソフトウェア「R」との連携も楽に行えるそうです.

導入で社会シミュレーションにおけるモデリングについて
古典から最新の重要と思われる論文について解説があり,その意義や効果についてお勉強.
1日目の半分くらいで座学が終わり,そこからはひたすらコードとの戦いが始まりました.

NetLogoは私も講義で扱ったことがあるのでそれほど苦ではありませんでしたが,
Pythonを扱うのは初めて.NetLogoとPythonを使ってまったく同じものを作り,
それを比較しながらモデリングを勉強していくのですが,3日目くらいから内容がかなりハードに.

homeworkも最初は楽々こなせていたのが,最後のほうは半日かけてグッタリという有様.
シミュレーションの講義を短期集中にするのはちょっとキツイかも...
Javaをやっていたのでオブジェクト指向についてはそれなりに理解しているつもりでしたが,
改めてPythonを通じてオブジェクト指向を基礎から学んでみると,
わかったようになっていたところがいくつかありました.

文法も含めてかなり短期間で詰め込んだので,
帰国してからも自分で勉強し直さないとまた忘れてしまいそうです.
これを期にPythonをモノにして,研究で使ってみよっと.

この1週間,朝からみっちり大変でした.土日にガッツリ休んだことは言うまでもありません.

2010年10月20日水曜日

大学院生の研究能力強化とは

橋本研ブログのほうに橋本さんから興味深い投稿があったのでコメントしようとしましたが,
書いているうちに長くなってしまったので,こちらに投稿することにします.

自分のまわりで,国際会議で招待されたり,欧米から院生やポスドクがやってくる人を見ていると,独創的で個性あふれるその人自身やその人がリーダーを務めるグループの研究で着目されている.その魅力に惹かれて院生やポスドクも来る.デュアルディグリー・プログラムをやっているとか,奨学金もらえるからということでは決してない.とくに博士課程の学生だったら,自分が所属している学校と相手先が提携校だからそこの大学院に進学しよう,というような「学校レベル」で志望するのではなく,こんな面白い研究をしている人の研究室で自分も研究したいと思うから,自ら行くのだろう.
橋本さんの投稿(2010/10/19)より引用


トリノ大でゼミや講義に参加していると,イタリアであっても,パリ大やイェール大など
さまざまな地域からさまざまな人種が集まっていることに驚かされます.
アジアからの留学生も多く,中国やインド系の学生はよく見ます.
残念ながら日本人学生はまったく見かけませんが.

トリノ大はイタリアの大学の中でも上位校と言われているので,
そのブランドもあるのでしょうが,やはりゼミのメンバを見てみると
受入研究者であるTerna先生の研究に惹きつけられて来る院生やポスドクが多いようです.

つまり「人」や「研究室」レベル.そういう人は当然ながら研究・目的意識が明確.意識が高い人が来ると,研究室のアクティビティが高まり,また自然に院生やポスドクが集まり,という感じでチームができてくるのでは.
橋本さんの投稿(2010/10/19)より引用


確かにイタリアでの院生の研究・目的意識は明確でレベルも高いです.
そもそもイタリアの大学は留年率が高く,卒業への道のりがとても険しいです.
なので学部生といえど,もの凄い勉強熱心で,教員のところにひっきりなしで質問にきています.
しかしながら,自然とチームが形成されるかというと微妙なところで,
結構個人プレーなところもあります.ゼミでの議論は極めて単調ですし,
端から見ていると,意図的に他人への研究に関与しないかのようです.
おそらく社会科学系という研究分野の性質も多分にはあると思いますが.

もうひとつ,以前JAISTのサポートボードミーティングでイタリアの大学では
日本よりも英語で行われている講義が少ないという資料がありましたが,
こちらの院生のほとんどは比較的流暢な英語を話します.
ドクター向けの講義はもちろん英語で行われています.
学部生であっても英語を話せる人は多いので,
英語の講義の数と学生の多様性はさほど関係ないのだと思いました.

JAISTが生き残るためには,SDプログラムや給付奨学金など
他大学も行っているような餌だけで優秀な学生を集めるのではなく,
ご指摘の通り研究者の魅力ある研究で学生を集めることも当然必要になってくると思います.
地理的な不便さや知名度の低さから優秀な学生が来ないと嘆く教員もいるかとは思いますが,
知名度を上げるのは教員の研究内容や成果にも多分に依拠してると思いますので.

大学の世界も完全にグローバル化し,世界中の優秀な学生確保が大学の生き残りの唯一の道っぽい感じになっている.日本はその点で大いに立ち後れている.
橋本さんの投稿(2010/10/19)より引用


優秀な学生の確保や教員の研究力向上は極めて重要なファクターでありますが,
在籍する学生の研究力の向上も当然無視できないファクターであると考えます.
私の浅はかな考えかもしれませんが,本学は他の大学がこぞって競う優秀な学生の確保よりも,
荒削りながら磨けば光るそんな学生を集めて教育をする,
そちらに特化した大学院として存在感を示すと
いうのもひとつの道なのではないかと思ったりもします.

国立大学も独法化され,交付金削減等で淘汰が始まっているさなか,
経営者側はそんな悠長なことを言ってられないのでしょう.
そもそも制度の枠組みをつくるのが大学院改革であって,
教育の現場は従来の意識を持ったままの教員に委ねられているのかもしれません.

本学の知識科学研究科はここ数年,知識科学を体系化すべく概論科目を創設したり,
講義にディスカッションを取り入れたりと講義ベースではめざましい改革が行われています.
しかしながら,研究活動に取り組み出すと,とたんに知識科学という概念が
どこかへ飛んで忘れ去られているような気がします
(講義の取り組みが始まったばかりというのもありますが).

研究科には3つの領域(社会知識領域,知識メディア領域,システム知識領域)があって,
それらは知識科学を形成する中で,いずれも欠かすことのできないものであるとされています.
概論では教員の研究成果からどのように知識科学が位置づけられるか考えるという
新しい試みがされているようですが(渡航後に行われていた講義は聴講していません),
学生の研究ベースで考えたときに果たしてその部分はどのように昇華されているでしょう.
多くの学生(私もそうでしたが)は,まだ知識科学を名目上の目的として捉えているでしょう.

学生各々の研究で知識科学がどのように位置づけられているかを認識するためには,
研究をしていないM1の段階だけではなく,研究が形になり始めたM2やドクターに
なってからも知識科学とは何ぞや?という問いかけを自己にしていかないとならないでしょう.
そのための提案として,講義だけではなく,領域や研究室を超えた学生同士の研究交流や,
研究科内の学生ポスター発表会もいいかもしれません.
できあがった研究成果よりも,どのような過程を経て知識科学と結びつけられたのか,
また自分の研究領域と異なる他の研究領域が自分の研究とどう繋げられるのか.
そんなことを考えられる場があったら知識科学と研究科全体が盛り上がっていくと思います.

私が今ぼんやりと考えていて実行したいのはドクターの学生へ
博士論文執筆過程をフィードバックする会です.
博士論文の書き方や心構えもそうですが,博士(知識科学)を得ることの意味や
それを得るために考えなくてはならないこと,そういう曖昧にしがちなところも
先駆者として後から続く者へ伝えていく必要があるのではないかなと考えています.

いまの私にできるのは全学・研究科全体のパフォーマンスをすぐに変えるマクロなものではなく,
ひとりひとりに自分自身で伝えて意識を変えていくミクロな活動だと思っています.
毎年やっている学振申請書検討会もそのひとつです.その結果,あらゆる"知"が創造され,
少しでもJAIST全体の研究活動が活性化されれば私としては嬉しい限りです.