2010年9月13日月曜日

ECCS'10

われわれが参加した会議はEuropean Conference on Complex Systemsといい,
ヨーロッパの複雑系研究の中心的会議です.5日間の日程で行われました.



私は今回初めてこの会議に参加しましたが,発表の多くがネットワーク関係の研究で,
わずかにあった経済関連もほとんどが実証系のネットワークに関するものでした.
逆に人工生命はまったく見かけず,純粋なカオス研究もあまり見かけませんでした.



会場のLisbon University Institute.強い日差しの下,白い建物が映えます.



二日目は金沢大の柴田先生と中京大の長滝先生,
そして金野さんを含めたグループのポスター発表があり,
最終日には辻野くんのポスター発表がありました.

Didier Sornetteのプレナリートーク"Parallels Between Earthquake Prediction,
Financial Crash Prediction and Epileptic Seizures Predicions".
大地震,金融市場における大暴落,てんかん発作に共通の特徴についてのお話し.
これらのほとんどは過去の現象によって引き起こされるものであり,
もはや金融市場の大暴落であっても予測は可能であると言い切ります.

トリノで論文を書いていたときに,uncertainty(不確実性)とは,
どのように定義されるものかをずっと考えてきました.
古典的にはKnightの定義に基づき確率的に起こる事象ではないとしています.
ミクロ主体の売買行動はuncertaintyによって起こるものであるが,
それらの帰結である大暴落は予測可能ということでしょうか.

Sornette教授は,もはやBig crashは「ブラックスワン」ではないとまで言っていました.
実際に金融市場の予測を発表しており,いくつかは的中もしているようです.
この考えが将来的に広く浸透していくならば,
大規模変動に対する制度設計の方策も大きく変わってくるでしょうね.

あと気になった報告をひとつ.Michael J. Bommarito II and Daniel Martin Katzの
"A Mathematical Approach to the Study of the United States Code"
合衆国法典の階層構造と相互依存関係を数学的に定式化したという報告.

年を追うごとに合衆国法典の階層構造と言語が拡大しているが,
条文ごとの相互関係は明確な依存関係になっているとのこと.
複雑化する法典の論理性を保つために言語表現や参照関係を強化しているのでしょう.
こうした分析手法は市場制度の複雑性を評価するのにも使えると思います.
市場の制度進化を考察する際にも取り入れたら面白い指標かもしれません.



会議初日はホテルで教えてもらったSanta Mariaというレストランにて夕食.
アンコウや魚介類が入ったスープをライスにかけていただきます.



こちらはタラを煮込んだスープに最初からライスが入ったもの.
どちらも私が嫌いなコリアンダーが入っていて避けて食べるのが大変でした(汗).

研究日誌と言いながら,研究の話が全然ないという指摘を受けていたので,
これからはちょいちょい研究のことも書いていきたいと思います(笑).