2010年10月12日火曜日

10月のミーティング

朝早く,帰国する母親と叔父をタクシーに乗せて自宅近くでお別れ.
一緒にいたのは1週間もありませんでしたが,ホントいろいろなことがありました.
特に前半のロストバゲージを乗り越えたことにより,私の戦闘力もアップしましたし.

午後からTerna研のミーティング(ゼミ)があるので,トラムで大学まで移動.
降り際に声をかけられ,振り返るとTerna研の院生さん.「僕のこと憶えてるか?」
と言われましたが,忘れるわけはありません.彼は3ヶ月前に私をトリノの街の中で
1時間も待たせた
張本人ですから(笑).ミーティングは月1の予定なのですが,
前回は7月末に行われた私のトークだったので,およそ3ヶ月ぶりの開催です.
久しぶりの再会ということで,バカンスのことや研究の進捗などを話しながら校内へ.
院生さんは普段別のキャンパスにいるので,めったに会うことはありません.
私のキャンパスにいるのは学部生ばかりなので,院生さんとの接点はないんですよね.

ミーティングは前回も話したポスドクと院生さんふたりがトーク.
ポスドクの方は,ほとんど前回の説明と一緒でしたが,モデルが改良されていました.
院生さんのひとりは,競争的環境から協力がどのように出現するかという研究を
アブストラクトな市場モデルで取り組んでいました.モデルを構築している最中らしく,
コードを見せながらトークをするのですが,私には細かすぎてわかりませんでした.
新規性の部分をいまいち見いだせなかったので,もう少し突っ込んで聞けばよかったです.

もうひとりの院生さんは,Terna先生が進めているイタリアの銀行間モデルの話.
銀行間決済には時点ネット決済であるDNS(Deferred Net Settlement)と
即時ネット決済であるRTGS(Real-Time Gross Settlement)があります.
RTGSだと連続的な決済が可能なので,ひとつの銀行が倒れたことによって起こる
システミック・リスクを削減することができると言われています.

かくいう世界各国の銀行間決済ではRTGSが利用されているようで,
日本でも日銀ネット(当座預金・国債・外為決済等)はRTGSを使っています.
ただしあらゆるすべての決済がRTGSになっているわけではなく,
内為決済で使われている全銀システムはDNSのままだったりします.
(全銀システムの大口決済は2011年に日銀ネットに移行予定).

前置きが長くなりましたが,問題はなぜRTGSが支配的な枠組みにならないかというものらしく,
RTGSのデメリットも挙げた上で,両者のハイブリッドシステムである
RRGS(Receipt-Reactive Gross Settlement)を用いたシミュレーションとネットワーク分析を
イタリア銀行間取引の実データを使って行っていました.
内部のミーティングなので,この先の結果等の詳細は控えますが,
やはり実データの収集と扱いが難しいとの話もありました.

院生さんの学生の発表を聞く機会はあまりないのですが,
皆さんレベルが高くてトークも比較的流暢な英語でこなしています.
ただしミーティングにおけるディスカッションは常に低調なので,
これは互いの研究には口出しをしないという個人主義の現れなのかもしれません.