2011年5月31日火曜日

人工市場実験の論文出版

私と橋本さんの共著論文が5月にEvolutionary and Institutional Economics Review (EIER)より出版されました.書誌情報は以下の通りです.

Shigeto Kobayashi and Takashi Hashimoto (2011) "Benefits and Limits of Circuit Breaker -Institutional Design Using Artificial Futures Market-", Evolutionary and Institutional Economics Review (EIER), Vol.7, No.2, pp.355-372.

投稿したのが2年前の10月でしたから,約1年半かかっての出版と相成りました.
この辺りの経緯につきましては,以前ブログの記事にも書かせていただきました.

論文の内容は,株式市場の取引停止措置である「サーキットブレーカーの発動期間」と
「発動後の市場の振る舞い」がどのような関係であるか人工市場実験によって考察しています.

価格情報に基づいて意思決定を行う取引エージェントに関する研究では,
サーキットブレーカーが価格変動の抑制・市場決済システムの安定化に寄与する一方で,
約定数量を減少させること,そして,サーキットブレーカーの発動期間の長さが
サーキットブレーカーの制度設計の重要パラメータであることを示しています.



上図の縦軸は価格変動率,横軸はサーキットブレーカーによる取引停止期間です.
市場に流動性を与えるランダムエージェント(Ar)の割合が少ない場合,
取引停止期間が長くなるに従って価格変動が大きく抑えられています.
しかし,Arの割合が大きいとサーキットブレーカーよる価格変動の抑制効果は減少します.

また,サーキットブレーカーによって極端な富の偏在が抑制されることを見出し,
サーキットブレーカーが市場システムの大規模な崩壊を抑える役割があることを見出しました.



上図の縦軸はジニ係数、横軸はサーキットブレーカーによる取引停止期間です.
市場に流動性を与えるランダムエージェント(Ar)の割合に関わらず,
取引停止期間が長くなるに従って利益の偏在が大きく抑えられているのがわかります.

大まかな説明となりましたが,詳しくは論文のほうをご参照ください.
論文はJ-STAGEのこちらのページよりダウンロードすることができます.

2011年5月16日月曜日

申請書説明会

日本学術振興会特別研究員を目指す学生を対象とした申請書説明会を開催しました.
このイベントは私が学生だった2年前から始めたので,今回で3回目となりました.

JAISTは大学院大学でありながら,学振特別研究員に申請する人がとても少ないです.
理由はいろいろあると思いますが,経験者の先輩がいないために「申請書の知」が
後輩へ継承されず,また創造もなされない土壌に問題があると個人的には考えています.

過去2度の開催を経て,徐々に皆さんの意識の高まりが感じられてきたので,
今回は具体的な申請書の例を示しながら,「めざせ学振研究員
-採用される申請書の書き方-」と題した講演をさせていただきました.



事前の申し込みの倍以上の人たちが集まってくださり,主催者として嬉しい限りでした.
私の他にも日高先生に「研究計画を書く前にしておくこと」と題した講演をしていただき,
こちらは参加者にとって目から鱗の話ばかりだったのではないでしょうか.



課題としては留学生対策が挙がりました.日本語を理解できない留学生も多くなっているので,
彼らのために今後は英語での講演や英語での資料配付ということが必要かもしれません.

次回のイベントは,実際の申請書を持ち寄って複数の教員がコメントする申請書検討会が
6月8日(水)に予定されています.贅沢な会ですので,こちらもふるってご参加ください.