2011年9月26日月曜日

JAISTフェスティバルのお知らせ

来たる10月1日に北陸先端科学技術大学院大学にてJAISTフェスティバルが開催されます.
これまで主に入学希望者向けに 実施されていたJAISTオープンキャンパスから,
能美市や能美市商工会との共催で地域住民の皆さまが楽しめるプログラムに変わりました.
当日は研究紹介だけではなく,地元中学校の吹奏楽や小松うどんなどの出店もあります.
プログラムの詳細はこちらよりアクセス.http://www.jaist.ac.jp/festival2011/index.html

私が所属している研究室では,研究のデモンストレーションとして3つの展示を用意しています.
ひとつはロボットとの視覚的インタラクション,もうひとつは左右が反転するメガネの体験,
そして3つ目は私が担当する「マネーココロジー~あなたの価値観教えます~」です.
これだけでは何のことだかよくわからないと思いますので,下に宣伝の画像を載せておきます.

   

他には研究室メンバが企画に携わっている高校生・高専生を対象とした科学教室もあります.
「体験!未来のモノづくり」と題して普段触れることの少ない3Dプリンターやレーザーカッター
などの自動工作機械を使って自分オリジナルの立体物の作成に挑戦できるそうです.
まだ参加者を募集しているそうなので,興味のありそうな高校生がいらっしゃいましたら
右のページから申し込みしてください.http://www.jaist.ac.jp/festival2011/kagaku.html

2011年9月20日火曜日

地域通貨「げんき」と「未杜」

9/10-11に地域通貨が持続的に流通している事例を調査すべく,
大阪府寝屋川市の「げんき」と兵庫県丹波市の「未杜(みと)」を
運営されている方々や会員の皆さまからお話しを聞かせていただきました.

「げんき」はNPO法人地域通貨ねやがわが発行している紙券型の地域通貨で,
寝屋川市内でのボランティア等を通じて手に入れることができます.
手に入れた「げんき」は寝屋川市内の19の商店街で買い物する際に使えたり,
別のボランティアをお願いする際の謝礼として使えます.



ここは「げんき」が一番多く使われている大利(おおとし)商店街です.
全81店舗,生活するためのほとんどのものをここで購入することができます.
「げんき」は前身の「ありがとう券」の頃より10年も続いている地域通貨です.

私は,長年ボランティアの対価として地域通貨が支払われれば,
もはやそこには親しい人間関係が形成されて,地域通貨を介さなくても
ボランティアが成立するのではないかと考えたのですが,
実態は逆のようで,地域通貨よりも現金を求めるケースが増えているそうです.
やはり需要があるボランティアは高齢者のサポートで,
特に介護保険適用外のサービスが求められているようです.
ですが,高齢者サポートは,ボランティアの中でも担い手が少なく,
内容もしんどいと感じる方が多いそうです.

地域通貨よりも現金が欲しいという現状では,
受け取る方も支払う方も「げんき」がどうして始まったのか?
その理念を思い返さなければ「げんき」を通じたボランティアも
通常の現金によるサービスに変わってしまうのかもしれません.

しかしながら,「げんき」の発行金額は年々増加傾向にあり,
平成22年度には600万円を超えています.
ボランティア以外の個人購入がほとんどない現状を考えると,
「げんき」によるボランティア活動は下火にはなっていないことがわかります.

また,大利商店街では「げんき」の利用促進に積極的ですので,
ボランティアという非商業活動と商店街での購買活動という商業活動が結びつくことで
地域を盛り上げるという「げんき」による街づくりはこれから本格化しそうな感じです.

一方で丹波市の「未杜」は,120名程度の会員の中だけで流通する通帳型の地域通貨です.
こちらはNPO法人丹波まちづくりプロジェクト事務局が運営を行っており,
「人権・環境・共生」がコミュニティのテーマです.
基本的に「未杜」のやり取りは会員のみで行われるので,
互いに顔の見える相互扶助や仲間作りが実現されていると感じました.

コミュニティ内で発行されている未杜新聞の始めには先ほど挙げた
3つのテーマ(人権・環境・共生)に沿ってこんな言葉が書かれています.

あなたの参画が多様性を認め合うコミュニティづくりの輪へ
あなたの余剰を分かち合う優しさが丹波の自然をまもる輪へ
あなたのすてきな能力の提供がコミュニティの自立と共生へ


今回10名ほどの会員の方々にお会いしましたが,
実に多種多様な方々ばかりで驚かされました.
主婦だけではなく海外勤務されていた元商社マンや造園業の方,
役所のOBや病気を克服された方...etc.
普通ならば価値観がぶつかりあって統制がとれないのでは?
と心配になるところですが,これが多様性を認め合う未杜の特徴なのでしょう.
さらに未杜では会員ぞれぞれの能力を生かすべく,
月に1回井戸端会議と称して会員が講師となり,自由な論題で講演を開くのです.
どんな人でも自分の得意分野で社会に貢献できるんだ!
そのことを未杜は実践をもってコミュニティに生かしています.
(井戸端会議は2001年から現在まで続いているそうです)



会員の皆さんとの会合の中で,こんな質問を受けました.

「ある方がいつも大幅なマイナスになっていてそのことを気にされている.
皆さんなら何と声をかけてあげますか?」

私は同じゼロサムゲームである先物市場を引き合いに出して
次のような趣旨の回答をしました.「先物市場は自分の持っている
お金を増やそうとする利己的な人たちが参加するコミュニティなので,
プラスになった人だけが生き残り,マイナスになった者はコミュニティから離脱していきます.
しかしながら,皆さんは3つのテーマに沿ったコミュニティを作ろうとして参加しているので,
マイナスになる人がいても会員から非難する者はなく,
その人を含めてコミュニティが形成されているのです」と.

今回の調査も含めて地域通貨には目的や用途にあわせて
様々なタイプものが存在していることを再認識させられました.
いずれの地域通貨も持続的に流通している一番の要因は
運営者の努力や工夫であることは間違いありません.

現在行っている地域通貨の流通メカニズムの研究も運営者の
少しの支えにでもなるような成果を出せるよう取り組んでいきたいと思います.