2011年11月1日火曜日

第2回知識共創フォーラム募集要項

私が実行委員を努めている第2回知識共創フォーラムが来年3月に本学で開催されます.
現在,本フォーラムでの参加発表者の募集を行っています.応募〆切は12月27日
1月10日(〆切延長されました)で,A4一枚の要旨の投稿が必要です.
論文賞も用意していますので,奮ってご参加ください.

第2回 知識共創フォーラム 発表募集案内 <http://www.jaist.ac.jp/fokcs>

 個人や組織における知識の創造・共有・活用に潜む知的神秘を解明し,より高度に成熟した知識社会を実現していくための指針を提案していくことは,知識科学の大きな学術的使命です.このような意識のもと,研究報告者と参加者が知識を共に創造していくことを通じ,広く知識科学研究の基盤を形成していくことを目的として,第2回知識共創フォーラムを開催します.

会期:平成24年3月3日(土),4日(日)
会場:北陸先端科学技術大学院大学・知識科学研究科棟5階・
      コラボレーションルーム2
住所:石川県能美市旭台1-1

1.主な構成
 第2回知識共創フォーラムは,以下の5種類のセッションによって構成されます.

[I] 招待講演セッション:
タイトル:「知識機構と認知の分散性」
講演者:下嶋 篤 教授 【同志社大学 文化情報学部文化情報学科】

[II] テーマセッション:「知識と外部世界」(20分発表,20分合同質疑応答)
 知識と外部世界との関係性について議論することで多様な観点からの共通の見解および共同研究の糸口を見出すことを目的とします.このセッションが本フォーラムの中核となります.

[III] 一般セッション(20分発表,20分質疑応答)
 本セッションでは,各自の知識科学研究の成果を報告し研究を進めることを目的とします.

[IV] シーズ(種)セッション(15分発表,20分質疑応答)
 知識の創造・活用を促進させると考えられる,自らの持つ技術やコンセプトの種を成長させることが目的のセッションです.

[Ⅴ] ポスターセッション(1時間30分発表)
 知識科学に関する内容について発表者がポスター形式で成果を発表し,参加者と議論を進めることで知識共創を促すことを目的とします.

2.対象課題
 知識の創造・共有・活用に関わるあらゆる研究を対象とします.特に,以下の課題に関係のある話題を歓迎しますが,これに限るものではありません. 

(1) 幅広い視野に基づいた社会や生活における知識の深い洞察と問題提起
(2) 知識の創造・共有・活用に関わる前例にとらわれない独創的な仮説や
  モデルの構築
(3) 知識を適切に抽出・評価できる方法論による仮説検証とモデルの洗練

3.本フォーラムでの発表の取扱い
(i)    発表のアブストラクト(1000字程度,かつ,A4で1枚)を,
       下記の「5.投稿方法」に従って投稿していただきます.
(ii)   アブストラクトの内容を査読した上で採否を決定します.
(iii)  [II]~[IV]のセッションに採録された方にはフォーラム開催の前に発表に関する論文を提出していただきます(ページ数は4-10).なお,ポスターセッションに採録された方の論文の提出は任意とします.提出された論文はweb版論文集を通じて公表されます.

4.主なスケジュール
・アブストラクト投稿締切  :平成23年12月27日(火)平成24年1月10日(火)(〆切延長されました)
・採録通知    :平成24年1月中旬
・論文提出    :平成24年2月15日(水)
・第2回知識共創フォーラム :平成24年3月3日(土),4日(日)

5.投稿方法
・知識共創フォーラムのwebサイト<http://www.jaist.ac.jp/fokcs>にアクセスし,登録の上,論文のアブストラクトのPDFファイルをアップロードして下さい.

・投稿に際して,テーマセッション,一般セッション,シーズセッション,ポスターセッションのどれに投稿するかを指定していただきます.ただし,選考結果によっては,ご希望のセッションとは異なるセッションに組み込まれることがあります.

6.論文賞
 [II]~[IV]のセッションにて発表された方の中から最も優秀であると認められた論文に対して論文賞を授与します.この他に,公共政策,地域経営の実践に寄与する優れた研究に対し,本フォーラムの開催地である能美市より能美市長賞が贈られます.

7.問合せ先
 知識共創フォーラム事務局
 Email: <office-fokcs@onto.jaist.ac.jp>





2011年10月26日水曜日

7年目の10.23

旧川口町の消費動向を調べるために長岡市や小千谷市の複数の商業施設を巡ってきました.
中越地方はスーパーマーケットの激戦区らしく,品揃えや営業時間,お客様サービス
どれをとっても,競合店に勝つべく工夫を積み重ねているなという印象でした.

さて,中越地方はこの10月23日で新潟県中越大地震から丸7年を迎えました.
このタイミングに合わせて震災のメモリアル拠点である4施設と3公園を結ぶ
中越メモリアル回廊」が整備されています.そのうち私は2施設と1公園を訪れました.



山奥の田んぼにある「震央メモリアルパーク」.2段目の田んぼが震源地になります.



震央が望める場所に子どもたちのふるさとへの想いが込められた碑が建っています.


長岡駅前にある知的情報集積拠点「長岡震災アーカイブセンター きおくみらい」.
iPad2を持ちながら震災地図の上を歩き,その地図に埋め込まれたARコードを見つけると?


どこでどんな被害にあったのか,また復興に向けてどんな活動をしてきたのか,
中越地域の震災後の状況をつぶさに知ることができる仕掛けになっています.



こちらは震災を通して育まれた絆に触れることができる交流施設「川口きずな館」.
手紙のかたちでiPad2に収録された川口5000人の「絆の物語」を読むことができます.


川口の方々から全国の皆さんへのメッセージ.夜には文字にロウソクが灯されました.


復興への願いが書かれた風船が川口の空へ一斉に飛ばされました.

7年を経て着実に復興を遂げつつある川口,町全体を巻き込んだNPO法人の設立など
住民主体のコミュニティ活動はまだまだこれからも衰えることはなさそうです.

2011年10月20日木曜日

知識科学シンポジウムのお知らせ

たいぶ遅くなりましたが,10月1日に開催されたJAISTフェスティバルで行ったデモには
たくさんの方々にご来場していただきました.この場を借りてお礼申し上げます.


さて,11月13日(日)に毎年恒例の「知識科学シンポジウム」が東京で開催されます.
場所は千代田区一ツ橋にある学術総合センターで,時間は9:55-16:35を予定しています.

「ナレッジマネジメントの多面的展開」というテーマで本学の教員をはじめとして,
一線で活躍されている研究者,宇宙開発に携わっている方などの講演があります.

他にも本学で研究に励んでいる学生さんたちのポスター発表も用意されています.
入学志望の方々はぜひお越しになって,本学でどのような研究が行われているか
一度ご覧になってみることをおすすめします.本研究室からは2名発表予定です.

参加申し込みとプログラムの詳細はこちらより.http://www.jaist.ac.jp/KSS14/


2011年9月26日月曜日

JAISTフェスティバルのお知らせ

来たる10月1日に北陸先端科学技術大学院大学にてJAISTフェスティバルが開催されます.
これまで主に入学希望者向けに 実施されていたJAISTオープンキャンパスから,
能美市や能美市商工会との共催で地域住民の皆さまが楽しめるプログラムに変わりました.
当日は研究紹介だけではなく,地元中学校の吹奏楽や小松うどんなどの出店もあります.
プログラムの詳細はこちらよりアクセス.http://www.jaist.ac.jp/festival2011/index.html

私が所属している研究室では,研究のデモンストレーションとして3つの展示を用意しています.
ひとつはロボットとの視覚的インタラクション,もうひとつは左右が反転するメガネの体験,
そして3つ目は私が担当する「マネーココロジー~あなたの価値観教えます~」です.
これだけでは何のことだかよくわからないと思いますので,下に宣伝の画像を載せておきます.

   

他には研究室メンバが企画に携わっている高校生・高専生を対象とした科学教室もあります.
「体験!未来のモノづくり」と題して普段触れることの少ない3Dプリンターやレーザーカッター
などの自動工作機械を使って自分オリジナルの立体物の作成に挑戦できるそうです.
まだ参加者を募集しているそうなので,興味のありそうな高校生がいらっしゃいましたら
右のページから申し込みしてください.http://www.jaist.ac.jp/festival2011/kagaku.html

2011年9月20日火曜日

地域通貨「げんき」と「未杜」

9/10-11に地域通貨が持続的に流通している事例を調査すべく,
大阪府寝屋川市の「げんき」と兵庫県丹波市の「未杜(みと)」を
運営されている方々や会員の皆さまからお話しを聞かせていただきました.

「げんき」はNPO法人地域通貨ねやがわが発行している紙券型の地域通貨で,
寝屋川市内でのボランティア等を通じて手に入れることができます.
手に入れた「げんき」は寝屋川市内の19の商店街で買い物する際に使えたり,
別のボランティアをお願いする際の謝礼として使えます.



ここは「げんき」が一番多く使われている大利(おおとし)商店街です.
全81店舗,生活するためのほとんどのものをここで購入することができます.
「げんき」は前身の「ありがとう券」の頃より10年も続いている地域通貨です.

私は,長年ボランティアの対価として地域通貨が支払われれば,
もはやそこには親しい人間関係が形成されて,地域通貨を介さなくても
ボランティアが成立するのではないかと考えたのですが,
実態は逆のようで,地域通貨よりも現金を求めるケースが増えているそうです.
やはり需要があるボランティアは高齢者のサポートで,
特に介護保険適用外のサービスが求められているようです.
ですが,高齢者サポートは,ボランティアの中でも担い手が少なく,
内容もしんどいと感じる方が多いそうです.

地域通貨よりも現金が欲しいという現状では,
受け取る方も支払う方も「げんき」がどうして始まったのか?
その理念を思い返さなければ「げんき」を通じたボランティアも
通常の現金によるサービスに変わってしまうのかもしれません.

しかしながら,「げんき」の発行金額は年々増加傾向にあり,
平成22年度には600万円を超えています.
ボランティア以外の個人購入がほとんどない現状を考えると,
「げんき」によるボランティア活動は下火にはなっていないことがわかります.

また,大利商店街では「げんき」の利用促進に積極的ですので,
ボランティアという非商業活動と商店街での購買活動という商業活動が結びつくことで
地域を盛り上げるという「げんき」による街づくりはこれから本格化しそうな感じです.

一方で丹波市の「未杜」は,120名程度の会員の中だけで流通する通帳型の地域通貨です.
こちらはNPO法人丹波まちづくりプロジェクト事務局が運営を行っており,
「人権・環境・共生」がコミュニティのテーマです.
基本的に「未杜」のやり取りは会員のみで行われるので,
互いに顔の見える相互扶助や仲間作りが実現されていると感じました.

コミュニティ内で発行されている未杜新聞の始めには先ほど挙げた
3つのテーマ(人権・環境・共生)に沿ってこんな言葉が書かれています.

あなたの参画が多様性を認め合うコミュニティづくりの輪へ
あなたの余剰を分かち合う優しさが丹波の自然をまもる輪へ
あなたのすてきな能力の提供がコミュニティの自立と共生へ


今回10名ほどの会員の方々にお会いしましたが,
実に多種多様な方々ばかりで驚かされました.
主婦だけではなく海外勤務されていた元商社マンや造園業の方,
役所のOBや病気を克服された方...etc.
普通ならば価値観がぶつかりあって統制がとれないのでは?
と心配になるところですが,これが多様性を認め合う未杜の特徴なのでしょう.
さらに未杜では会員ぞれぞれの能力を生かすべく,
月に1回井戸端会議と称して会員が講師となり,自由な論題で講演を開くのです.
どんな人でも自分の得意分野で社会に貢献できるんだ!
そのことを未杜は実践をもってコミュニティに生かしています.
(井戸端会議は2001年から現在まで続いているそうです)



会員の皆さんとの会合の中で,こんな質問を受けました.

「ある方がいつも大幅なマイナスになっていてそのことを気にされている.
皆さんなら何と声をかけてあげますか?」

私は同じゼロサムゲームである先物市場を引き合いに出して
次のような趣旨の回答をしました.「先物市場は自分の持っている
お金を増やそうとする利己的な人たちが参加するコミュニティなので,
プラスになった人だけが生き残り,マイナスになった者はコミュニティから離脱していきます.
しかしながら,皆さんは3つのテーマに沿ったコミュニティを作ろうとして参加しているので,
マイナスになる人がいても会員から非難する者はなく,
その人を含めてコミュニティが形成されているのです」と.

今回の調査も含めて地域通貨には目的や用途にあわせて
様々なタイプものが存在していることを再認識させられました.
いずれの地域通貨も持続的に流通している一番の要因は
運営者の努力や工夫であることは間違いありません.

現在行っている地域通貨の流通メカニズムの研究も運営者の
少しの支えにでもなるような成果を出せるよう取り組んでいきたいと思います.

2011年7月27日水曜日

地域通貨流通実験のDP刊行

北海道大学の西部先生と栗田さんと共同で行っている貨幣意識の論文が
ディスカッションペーパーとして刊行されました.書誌情報は以下の通りです.

小林 重人,栗田 健一,西部 忠,橋本 敬(2011)『地域通貨流通実験にみるミクロ・メゾ・マクロ・ループの流れ-メゾレベルの貨幣意識を中心にして-』,「北海道大学大学院経済学研究科 Discussion Paper Series B」,No. 2011-96.

この論文は今年3月に開催された進化経済学会での発表内容に対して,
研究会や学会での議論を踏まえて修正を加えたものとなっています.

我々は,貨幣制度が制度生態系を形成していることに着目し,
複数の貨幣が共存している現実は,経済合理性という観点だけで十分説明できず,
貨幣は人々が抱く価値規範を反映した制度でもあるという仮説を提示してきました.
提示した仮説を検証するために,これまで人々の貨幣意識をアンケートによって調査し,
4カ国のべ300人以上から回答を得てきました.

主な成果として社会活動の違いによる貨幣意識の差異,
地域通貨の流通実験前後による貨幣意識の差異を明らかにすることで,
貨幣意識の差異から制度形成および変化のメカニズムを探ってきました.
しかしながら,ミクロ・メゾ・マクロ・ループにおいて貨幣意識の変化がどのように起こり,
ループ内の関係に影響を及ぼしているのかについては説明できていませんでした.
本稿では,仮説として示したミクロ・メゾ・マクロ・ループがどのように機能し,
貨幣意識と相互作用を行っているかについて検討,説明するものとなっています.

分析内容と結果につきましては,論文をご参照ください.
論文は北海道大学のリポジトリであるHUSCAPよりダウンロードすることができます.

2011年6月28日火曜日

長岡市川口地区インタビュー調査

上越教育大学の吉田先生と共同で進めている新潟県長岡市川口地区における
地域通貨導入の研究のため,現地でインタビュー調査を行ってきました.

川口地区までは車で片道4時間かかります.前回は日帰りをしてヘトヘトになったので,
今回は木沢集落にある「朝霧の宿 やまぼうし」に宿泊することにしました.
ここは2004年に廃校となった木沢小学校の建物を利用して地元の人たちが
運営している手作りの宿です.お風呂やアメニティグッズはありませんが,
地元ならではの山菜料理がふんだんに振る舞われました.



もちろん体育館も現存しています.思わず懐かしい綱登りもやってしまいました.



壁は一面に集落での活動の様子がポスターとして張り出されていました.
木沢の人たちがこの集落の良さに自信と誇りを持っていることが伝わってきました.



自然も食事も良いですが,「やまぼうし」には人の心の温かさがありました.
レクリエーションや焼き物,そば打ちも体験できるそうなので,ぜひ利用してみてください.



一泊二食(大人ひとり)5,900円より
昼食のみ(5名以上・ひとり)1,000円より
住所:長岡市川口木沢467番地
電話:0258-89-2455

翌日の昼食は,「やまぼうし」と目と鼻の先にある「木沢里山食堂」でいただきました.



木沢産そば粉100%使用の自慢のそば.これで800円とは安すぎです.
四角いそばではなく,丸そばというのも珍しいです.毎週金・土・日のみ営業しています.



インタビュー調査のほうは,地域通貨の流通に深く関与するであろう人たちから
導入に関して前向きなコメントや具体的な流通のイメージを聞き出すことができました.
うまく進んでいけば1年や2年で終わるような仕事にはならないと感じましたので,
川口の活性化に寄与するようにじっくりと微力ながらお役に立ちたいと思っています.

2011年6月8日水曜日

申請書検討会

学生から事前に提出された学振研究員の申請書に対して複数の教員が
コメントおよびアドバイスを行う申請書検討会を開催しました.

このイベントは昨年度から始めたもので,開催の経緯は,申請書の書き方を教えても
学生が実際に上手く書けているかどうか見えてこなかったというのが理由です.
今年度の参加者は5名,昨年度が2名でしたので前年比2.5倍増となりました.



アドバイザーとして5名の教員に協力をお願いし,学生ひとりに対して専門領域が
近そうな教員とそうではない教員にアドバイザーとしてついていただきました.
これはタコツボ化を避けるためと,専門外の人にでもわかる申請書を書いてもらうためです.

アドバイザーは自分の経験に基づいてさまざまな指摘を行います.
基本的に学生の申請書がより良いものになるようにアドバイスを行っていますが,
これらは必ずしも他のアドバイザーからの指摘と一貫性のあるものではありません.
学生はこの点を理解した上で取捨選択し,自分の申請書を直さなくてはならないのです.
逆に混乱を招いているかもしれませんが,実はこれも知識科学的な営みなのかもしれません.

今回の説明会と検討会の参加者から学振研究員が生まれることを切に願っております.
また,本活動に対するご意見やご感想がありましたら,ぜひコメントに書き込んでください.
学内限定の学振情報サイトへの投稿もお待ちしております.よろしくお願いいたします.

2011年5月31日火曜日

人工市場実験の論文出版

私と橋本さんの共著論文が5月にEvolutionary and Institutional Economics Review (EIER)より出版されました.書誌情報は以下の通りです.

Shigeto Kobayashi and Takashi Hashimoto (2011) "Benefits and Limits of Circuit Breaker -Institutional Design Using Artificial Futures Market-", Evolutionary and Institutional Economics Review (EIER), Vol.7, No.2, pp.355-372.

投稿したのが2年前の10月でしたから,約1年半かかっての出版と相成りました.
この辺りの経緯につきましては,以前ブログの記事にも書かせていただきました.

論文の内容は,株式市場の取引停止措置である「サーキットブレーカーの発動期間」と
「発動後の市場の振る舞い」がどのような関係であるか人工市場実験によって考察しています.

価格情報に基づいて意思決定を行う取引エージェントに関する研究では,
サーキットブレーカーが価格変動の抑制・市場決済システムの安定化に寄与する一方で,
約定数量を減少させること,そして,サーキットブレーカーの発動期間の長さが
サーキットブレーカーの制度設計の重要パラメータであることを示しています.



上図の縦軸は価格変動率,横軸はサーキットブレーカーによる取引停止期間です.
市場に流動性を与えるランダムエージェント(Ar)の割合が少ない場合,
取引停止期間が長くなるに従って価格変動が大きく抑えられています.
しかし,Arの割合が大きいとサーキットブレーカーよる価格変動の抑制効果は減少します.

また,サーキットブレーカーによって極端な富の偏在が抑制されることを見出し,
サーキットブレーカーが市場システムの大規模な崩壊を抑える役割があることを見出しました.



上図の縦軸はジニ係数、横軸はサーキットブレーカーによる取引停止期間です.
市場に流動性を与えるランダムエージェント(Ar)の割合に関わらず,
取引停止期間が長くなるに従って利益の偏在が大きく抑えられているのがわかります.

大まかな説明となりましたが,詳しくは論文のほうをご参照ください.
論文はJ-STAGEのこちらのページよりダウンロードすることができます.

2011年5月16日月曜日

申請書説明会

日本学術振興会特別研究員を目指す学生を対象とした申請書説明会を開催しました.
このイベントは私が学生だった2年前から始めたので,今回で3回目となりました.

JAISTは大学院大学でありながら,学振特別研究員に申請する人がとても少ないです.
理由はいろいろあると思いますが,経験者の先輩がいないために「申請書の知」が
後輩へ継承されず,また創造もなされない土壌に問題があると個人的には考えています.

過去2度の開催を経て,徐々に皆さんの意識の高まりが感じられてきたので,
今回は具体的な申請書の例を示しながら,「めざせ学振研究員
-採用される申請書の書き方-」と題した講演をさせていただきました.



事前の申し込みの倍以上の人たちが集まってくださり,主催者として嬉しい限りでした.
私の他にも日高先生に「研究計画を書く前にしておくこと」と題した講演をしていただき,
こちらは参加者にとって目から鱗の話ばかりだったのではないでしょうか.



課題としては留学生対策が挙がりました.日本語を理解できない留学生も多くなっているので,
彼らのために今後は英語での講演や英語での資料配付ということが必要かもしれません.

次回のイベントは,実際の申請書を持ち寄って複数の教員がコメントする申請書検討会が
6月8日(水)に予定されています.贅沢な会ですので,こちらもふるってご参加ください.

2011年4月19日火曜日

さくら祭

研究科恒例の新入生歓迎会である「さくら祭」が大学近くにある
石川ハイテク交流センターにて18:00~20:00に開催されました.

私も7年前に同じく「さくら祭」でM1として入学を歓迎していただいた記憶があるので
とても歴史があり,今も昔も主催は学生の有志ということで心温まる会になっています.
新入生の参加費は無料!学生であっても1,000円と大変お安くなっています.
先生方からも多くのお酒の差し入れがありました(来年は私も何か差し入れなくては).



会のメインイベントであるビンゴゲームの景品は今年も豪華!鯉のスカジャンにはビックリ.



主催である学生団体ComInnovationは,会の様子をUSTREAMで生中継もしていました.
でも一体誰がこの様子を見るのでしょうか.今年修了したOBに需要があるのかな?



ビンゴゲーム最中の風景.皆さん,表示される数字に一喜一憂.
密かに目玉であるソファを狙っていたのですが,残念ながらビンゴには至らず.
ですが,新入生に多くの商品が当たっていたので,はずれても嬉しい限りでした.



大いに食べ,大いに飲んで,コースワークに忙しい新入生にとっては
レポートやグループワークを抱えながらも,つかの間の休息だったのかもしれません.
ゴールデンウィークが目の前ですが,気を緩めず頑張っていきましょう!!

2011年4月10日日曜日

キックオフ合宿

白山麓にある御前荘にて,研究科の新入生を対象としたキックオフ合宿が開催されました.
キックオフ合宿は今年度からスタートしたばかりで,新入生と教員が一堂に会して
各研究室の紹介や発想支援のセミナーを通じて親睦を深めようというイベントです.

他己紹介から始まり,お昼から夕食を経て21時まで教員による研究紹介が行われ,
私も7分間という限られた時間で,研究の簡単な概要と副テーマの説明をさせていただきました.



私がどんなことに興味を持っていて,副テーマでどんなことにチャレンジできそうか,
そんなことが少しでも新入生の皆さんに伝わってくれていたら嬉しいです.



夜は教員たちとの懇親会.私も何名かの新入生の方々とお話しをさせていただきました.
お酒も入っていたせいか,時間も足りなく,たくさん話すことができませんでしたが,
やる気のある元気な学生が多かったように感じました.これからの講義が楽しみです.

2011年3月12日土曜日

大地震

イタリアの友人であるMatteoからSkypeで今回の地震を心配する連絡をもらい,
ブラジルからは我々のガイドを担当してくれたClecianeから研究メンバの
安否を気遣うメールをもらいました.

世界各国で大地震による日本の被害が大々的に報じられているようです.
石川県では特に大きな被害もなく,無事である旨をふたりに伝えました.
国は違えど,人と人との結びつきの強さを感じさせられました.

追記:
その後,イタリアでの受入研究者だったTerna先生からも無事かどうか心配する
メールをいただきました.イタリアのメンバも心配してくれているようです.

2011年3月11日金曜日

パルマス銀行 後編

施設内部には銀行の他にも裁縫工場や研修施設,そして洗剤工場も併設されています.
地域の女性や若者向けのいろいろなプロジェクトもここより生み出されています.



工場で作られたものは,入口にあるショップで売られていました.
もちろん地域通貨での買い物もOKです.他にも民芸品などたくさん売られていました.



週に一度開催されている住民集会にも参加させてもらえました.
開催前に貨幣意識アンケートを全員に回答していただけました.
集会はダンスあり,歌あり,真面目な話もありと,日本のそれとはだいぶ異なるものでした.
エンターテイメントも入れることで集会の間口を大きくしているのでしょうね.



その際に地元新聞の取材も受けました.日本人の研究者がはるばる地球の裏側まで
やってきたことがめずらしかったのでしょう.翌日,写真入りで掲載されました.



州政府を訪れたときには,なんと州知事との面会もかないました.
このときの写真はパルマス銀行のブログのほうにアップしていただけたようです.
(州知事に会うのに半袖短パンは本当に申し訳なかったです)
http://institutopalmas.weebly.com/1/post/2011/02/arigatou.html

インタビュー後,州政府の職員のひとりが私のほうへ来て
Kobayashiという名字はサンパウロの日系人に多いんだよ,なんて話をしてくれました.
日本でも多いほうの名字ですからね,当然日系人にもたくさんいることでしょう.

あと,住民組織であるASMOCONPの30周年パーティにも偶然に遭遇し,
ブラジルのお祭り気分をちょっとだけ味わうことができました.



パルマス銀行近くの別の食堂でブラジル名物フェジョアーダも食べました.
フェジョアーダを食べたいと言ったら,作ってあげるから翌日また来なさいと言われ,
翌日にその食堂へ行ったら,きちんと約束を守ってくれて出されたのがコレです.



最後にパルメイラ地区の広場に書かれていた印象深い言葉を紹介します.
「神は世界をつくったが,パルメイラ地区は我々がつくった」

この地域に5日間滞在して,ここの人たちの想いを素直に表している言葉だと感じました.



これにてブラジル編をおしまいにします.
また何かイベントがありましたら更新することがあるかもしれません.

2011年3月10日木曜日

パルマス銀行 前編

本来ならばブラジル滞在中にブログを更新していこうと考えていたのですが,
連日朝から晩まで調査していたので,ブログを更新している余裕がありませんでした.
既に帰国して10日経っていますが,調査先のパルマス銀行を中心に2回にわけて
フォルタレザの郊外の様子や現地の人々との交流を振り返ってみたいと思います.



今回訪問したパルマス銀行は,フォルタレザのパルメイラ地区で流通している
地域通貨や地元住民へのマイクロクレジットを運営している小さな銀行です.
調査内容については,近いうちに報告書が刊行される予定です.
それまではウィキペディアのパルマス銀行のページなどで補完ください.

パルメイラ地区はかつてジャングルだった地域で,ところどころにヤシの木も見られます.
もともと沿岸部にあったスラム街の人たちをリゾート開発によって強制的にこの地域へ
移住させたところから歴史が始まります.なので,いまだにこの地域は貧困層がほとんどです.
車ではなく馬も貴重な輸送手段のままのようです.またがって走っている人も見かけました.



そのヤシの木がパルマス銀行のシンボルマークにもなっています.
ヤシの木があるということは,熱帯気候ということ.気温30度以上かつ雨季なので,
蒸し暑い日がずーっと続きました.もちろん半袖短パンでいたのですが,
そうしたら蚊にいたるところを刺される始末.デング熱も怖かったのですが,暑さには勝てず.



パルマス銀行のメインフロアには大きなチェ・ゲバラの写真が.
ゲバラTシャツ着ている人や,なかにはゲバラの格好を真似している人もいたので,
いまも南米の庶民のあいだではゲバラは絶大な人気を誇っているようです.



ランチは銀行の近くにある食堂でいただきました.銀行から出るときには
街中でカメラを出さないようにきつく言われました.やはり窃盗が多いようです.
ですが,街中を歩いていてもそれほど危険は感じませんでした.

ライスとパスタ,それにメインにソーセージをつけて6レアルくらいだったでしょうか.
1レアル=50円なので,安い食堂なら300円くらいでお腹いっぱい食べられます.



地元若者たちの演奏も聴かせていただきました.やはりこちらの音楽は騒がしくノリがいい.
カーニバルのシーズンなので,都市部に出張して演奏するための練習をしていたようです.



パルメイラス地区で2番目に大きなスーパーを訪問.
オーナーの自宅にもなっている屋上テラスからパルメイラス地区を望みます.
山になっているところは,かつてゴミの埋め立て地だったところだそうです.



ブラジルの主食はお肉.ご家庭には炭焼き用のストーブが設置されています.
若いうちは嬉しいですが,30歳も過ぎると肉ばかりはキツイですよね.
ですが,ブラジルでは老若男女問わず肉をたくさん食べてました.

2011年2月20日日曜日

シュハスコ

ホテルから徒歩数分のところにビーチがあるので,泳ぐのもありなのでしょうが,
残念ながら今の時期のブラジルはちょうど雨季.
スコールのような激しい雨が降ったりやんだりの繰り返しです.

試しにビーチを歩いてみたのですが,カメラを取り出すだけで
お金をせびる子どもが現れたり,大声の客引きがいたりしてちょっと怖い感じ.

それでも一歩ビーチを離れると,そんなことは一切なく,
危険な思いをせずに,わりと普通に街中を歩くことができます.



遅めのランチに選んだのが,ブラジル名物のシュハスコ
ホテルから徒歩で迷いながらSAL E BRASAというお店に行きました.
基本的に炭焼きの牛肉が食べ放題で,その他サラダやごはんものも充実しています.



ホテルでもらったお店のカードで,ウェルカムドリンクとしてジンライムがもらえました.



お店の中はこんな感じ.日曜とあって,14時を過ぎていても家族連れで賑わっていました.



串焼きの肉をウェイターがテーブルまで運んでくれて,その場で切り分けてくれます.
それぞれのウェイターが持ってくる肉の部位は違うので,好きなものを自分で選びます.



皿にある肉がなくなると,ウェイターが次から次へと肉を持ってきてしまうので,
もういらないときには,テーブルの上にこの赤い紙を出しておくと,拒否の意となります.



逆にこれを裏返すと,緑の紙になっていて,どんどん持ってこーいという意味になります.



というわけで,ひたすら肉を食らい続けました.
肉の味はローストビーフみたいで,とてもおいしかったです.



あまり聞かないブラジル産のワインも飲んでみました.こちらは普通って感じでした.



ご想像の通り,この日はもはや夕食を食べに行く元気もなく,
食べ疲れてホテルに戻ってすぐにベッドに横たわりましたとさ.