『進化経済学 基礎』が9月末に日本経済評論社より刊行されました.
この本を作成する過程は,ほんの少ししか見ていませんが,
話に聞くと数年越しの長い長い作業だったようです.
私はこの本の中で第3章1節の
「複製子と相互作用子による制度進化の記述:サーキットブレーカーを例として」
を橋本さんと一緒に担当しています.
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株式市場には相場が大きく変動した時に市場での取引を一時的に
中断させる「サーキットブレーカー」という制度があります.
この制度の狙いは,株価の暴落を直接抑えて市場の混乱を未然に回避することにあります.
2008年9月のリーマンショックによる金融市場の混乱をきっかけに世界各国の
証券取引所でこの制度を導入したり,改変したりする事例が相次いで起こりました.
しかしながら,サーキットブレーカー制度の導入をめぐっては,
その実効性について研究者の間から懐疑的な見解も数多く見られます.
本教科書では,実効性に関して経済効率性だけでは説明できないサーキットブレーカーの
制度変遷を複製子・相互作用子という進化経済学の基礎的概念を用いた説明を試みています.
現実の3つの取引所(ニューヨーク,大阪,韓国)における制度変遷を例にしながら
図も交えたわかりやすい形で,導入した概念による説明の有効性を示しています.
進化経済学によって経済社会をどのように捉えることができるのか?
きっといままでないユニークで面白い教科書になっていると思いますので,
興味を持たれた方はぜひご一読ください.よろしくお願いいたします.