2010年12月3日金曜日

トリノ映画祭

トリノはイタリアにおける映画産業発祥の地とも知られ,トリノのランドマークである
モーレ・アントネッリアーナ(タワー)は国立映画博物館にもなっています.
そんなトリノで毎年この時期に開催されているのがトリノ映画祭です.
ヴェネツィアやカンヌといった有名な映画祭とは趣が異なり,新進気鋭の監督たちの
作品に注目した,ある意味これからの若手を育てていくための映画祭となっています.

会場は市内の複数の映画館に分散しているのですが,比較的自宅からも近い
モーレ・アントネッリアーナ直下にあるCinema Massimoも上映会場であることを知り,
事前にチケット(7ユーロ)を購入して2つの短編映画を観に行ってきました.



会場途中にあるポー通りのイルミネーション.ピエトロミッカ通りは星座だったので,
今年のトリノのイルミネーションは宇宙がテーマなのでしょうか?



会場のCinema Massimo.少し早く着きすぎたので,館内で前の上映が終わるまで待機.
もぎりのイタリア人はずっとグッズ販売の男性とおしゃべりに夢中でした.
客席でも上映までスタッフが電話で雑談してるなど,かなりゆるーい空気が.
レッドカーペット!みたいな感じではなく,実に庶民的で気さくな映画祭です.

一本目は日本の映画で「びおん」.日本語だから聴き取れるということもあったのですが,
観客であるイタリア人がどういうところに反応するのか観たかったというのが選択の理由です.

この作品は作中での言葉が少なく,その代わりにあらゆる音が多用されています.
その分,背景や役者の表情からの類推を余儀なくされるというところに,
観客の感度を高めさせる狙いがあったのでしょう.役者陣の演技も変に芝居がかっておらず,
日本の田舎にある日常を切り取ってきたかのような,まったくの自然体なところがよかったです.

上映後,作品監督と主演女優へのインタビューと観客との質疑応答がなされました.
観客からの質問は,タイトルの意味や作中の演出の意図に関してとても細かいものでした.
中にはそこまで深読みしたり,勉強してきたかという質問も.
イタリア人の日本映画好きは知っていましたが,それほどまでに!と思い知った夜でした.
実際に次のフィンランド映画の上映前には観客の1/3が退席してしまいましたので.

そのフィンランド映画はカンヌ映画祭でも上映された"Taulukauppiaat (The Painting Sellers)"
クリスマス前の凍える寒さの中,不思議な組み合わせの3人が絵を売り歩くというお話しです.
英語の字幕があったので,話の流れはなんとか.個々で葛藤を抱え,アンバランスながらも
特異な友情が形成されていく...何でしょうね,このわかるようでわからない感じ.
途中で席を立つ観客がかなりいたので,評価の分かれる作品なのでしょうが,
私はこのもやもや感こそが,大衆映画では感じられない,人間臭さなんだろうと思いました.



上映終了後,Cinema Massimoからのモーレ・アントネッリアーナの眺め.
近いうちにこのタワーの中にある国立映画博物館の様子もご紹介しますね.

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